それにしても先走りすぎなSSです。しかもいろいろとアレな感じでイタタ!と思わざるを得ない雰囲気。あとまあうら若き乙女!の自信があるお嬢さんは読んじゃ駄目です。
では5話の延長線上ということで大丈夫そうな御方だけどぞー。
*
「俺は幸運だと思ってる」
「なん、で…っ、」
「だって、きみとこんなに近くいられる―――ずっと、そうだといいのに」
「違……ッ」
リヒテンダールはアレルヤの頬に指を滑らせながら、極優しげな声でそう言った。問われたことへの解答は決して渡さないという確かな意思を携えて。
その指先が肌を擽る度に、アレルヤはびくびくと怯えるようにからだを震わせる。ふ、と吐息を耳元に注がれる、それは愛の言葉とともに、であるが故にずっと、アレルヤに恐怖を与える。それを分かっていて、リヒテンダールは更にやわらかくアレルヤのからだを抱き締めた。
「好きだよ、アレルヤ」
「やめて、ください」
ちゅ、と鼻先にキスをする。隠しようのないほどに熱を孕んだからだを煽る、リヒテンダールのてのひらはもうすぐアレルヤの最も嫌う欲を示す場所に辿りつく。焦らすように、けれど確実に近づく決壊の時を恐れて瞼を下ろす、様の美しさがリヒテンダールは好きだった。
緩く目を細めて、唇を奪う。下唇をゆっくりと舐めると、僅かに戦慄く所為で頑なに拒む抵抗が少しやわらいで。腹から下ろしていくてのひらと時を合わせ、一息で全てを侵食するキスに変えてしまえば、あとは彼は翻弄されるばかりだ。舌を伝わせる唾液に、更にほんの少しの媚薬を混ぜることさえ容易い。
「ん、ぅ…」
くたりとからだを凭せ掛けるしぐさに満足して、アレルヤの髪を撫でる。
「休暇だと思えばいいよ、きみは出撃しなくていいんだ。俺は嬉しいけど」
「あ、ァん…ッ」
死にたいのでもなく、殺したいのでもなく、創りたいのだと言って銃を手に取ることは傲慢だ。実際、その矛盾は今にも彼自身の胸を押し潰さんばかりだというのに、強いふりだけをしているからこういう目に遭うのだと、リヒテンダールは笑った。結局己から自分を殺しきれない人間は、他人に強いられることを嫌う。人の言うことを、考えもせずになぞるだけの能無しには目的を語る資格などないとは思うが、自ら進んで苦しみ抜く道を選ぶのもどうなのだろう。果たしてそこにあるのは覚悟と呼ぶに相応しい想いなのか。
アレルヤは、リヒテンダールの手が僅かでも動くたびに耐えるように息を詰め、けれど苛む腕に、ねだるようにきつく縋りつく。
「わからないだろう?俺が何を考えてるのか」
「し、りませ、ん…ッ」
「知らない、ときた。だったら、考えてみるといいさ」
す、と意地悪を続けていた手を離す。はあ、と深く吐息を零すアレルヤの額に、キスを一つ落としてから。
鮮やかに笑う、彼に悪意はない。然りとて好意の欠片も無い愛情で構成された行為に、アレルヤはどうしても馴染めない。すくりと立ち上がって、出て行こうとするリヒテンダールの背に、かけるための言葉だって、分からないというのに―――
「好きだよ、アレルヤ。だから答えを聞かせて欲しい、…夜まで、待っているから」
きみも俺を待っていて、と言葉にすることのできない、リヒテンダールのくだらないプライドの所為でアレルヤのからだは熱に苛まれ続ける。理解できない、というのは心情のことで、その状況を理解したとき、アレルヤはどんな顔をするのだろう。けれども、部屋を出てロックをかける、瞬間に謝罪を呟く声は、決して届いてはいけないのだ。
*
考え方は違えどしていることは変わらないという客観的事実を内側から眺めざるを得ないジレンマ。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
*
河西への連絡はメールフォームかコメント欄を使うとよいのではないだろうか。
直訴窓口:
set-ss.solution眉hotmail.co.jp
(眉は@)