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00の二次創作ss置き場。女性向け。 オフィシャルという言葉とは一切無縁。関係者禁。 無断転載とかは勘弁してください。
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[  10/29  緑×橙  ]

「ヒドいカオしてる」
「ええ、きっと」

そうなのでしょう。
最後まで言わずに、アレルヤは自分を見つめる透けた緑の双眸から目を逸らした。
そうしなければならない、というほどの理由はない。しかし、見るほどに悲しみを湛えたその仕草はすべて彼の興味を惹く。そうして引き寄せられた指先は冷たく、白い頬を滑る感覚が恐ろしくて、アレルヤはひくりと身を竦ませた。
なあ、と低い声に誘われるけれど、逃れるように瞼を下ろして、顔を俯ける。抑も初めからアレルヤに与えられていたものなど皆無なのだから、抵抗する術といえばあとは目の前の彼の首を絞め、その命を奪って手中から逃れるほどのことしかない。余裕も、自由も、何一つ彼との関係では許されないというのに。
静かなくちづけを受け入れる。彼は優しくなどない。それでよいと思うけれど、傷口は滑らかな舌先に鋭く抉られて、そのままでいることの難しさを思い知る。それはあまり心地よいものではないな、と。

「なあ、呼べよ」

深いキスの合間に面白そうに言う、救いようのないのはこの男ではなくて自分のほうだ。決して流されているのではないと、強く睨みつけることを敗北とするのならば何もかも受け入れて忘れ去ることがずっと楽だから。そんなふうに諦めて、語る言葉さえないのだと為されるままに熱に浮かされて。数を重ねるごとに、不思議と優しくなっていく指先はもう胸元まで辿りつき、悲鳴をあげたくなるほどに鮮やかな痺れを刻み付ける。
そうしていつも、この男はアレルヤに思い知らせるのだ。緑色の瞳をひらめかせて、この世界には自分を救う者などもういないのだと。苦痛も、快楽も、屈辱も、その全てを示す行為は信頼さえも裏切り突き崩す。他人への、ではなく自分への、自身すら御し難い感慨をどうすればよいのだろう。そういうとき、迷いを断じる存在へと手を伸ばす、のだけれど。彼の前ではそれができない。もしもそうすれば、きっと彼は何故、と興味深さを装った、ぞっとするほど冷たい声色で尋ねるのだろう。
そして、この腕に縋ることのみを考えろと、彼は言う。嘆きながら求めてみせろと、アレルヤを責める。
拒絶する理由を持たないアレルヤには受け入れる術さえ有りはしない。だからこそ戸惑いながら、何一つ是とせず非とせずそこに在る―――、凛として、というには些か頼りないが、それは至高の美しさだ。
ゆえに、変わらないことの価値を求める男は不安ばかりを胸のうちに留めるアレルヤへ、決して救いを与えない。神を呼び、迷いを吐露する行為は美学への背徳だ。擦れ違わない想いは然りと言うにもあまりにかけ離れた場所にあって、見定めたその上で交わることを強いるのはいつだって揺るぎない緑色の双眸。
決して染まらない闇色は深く浅く、いっそこの色彩が自分のものになればよいのに、だなんて。明日になればこの手は血に染まってしまう、だけならば瞬間の愛おしさは憎しみに変わってしまえばいいとさえ。伝えようとしない心を理解しない唇が、まだ誰の名も呼ばないことに安堵するうちには、快楽を貪るほうが後悔しなくて済む。
或いは、彼らをどちらも感情の乏しい者だと言うことは可能だ。
しかし敢えて残酷だと表すべきは、そうして過ごす夜の虚しささえも、彼らにとっては生きるという実感に代えて余りあるのだという事実に他ならないのだ。

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この場所では、優しさなど幾許も価値のないものである、と。
断じる強さは自分にはないのだけれど、クロスを切ることができるほどにこの手はもう清らかではない。
心中のみで讃える神はイメージの世界でさえ実像を結ぶことなく、寧ろ汚されていく白い砂浜には、数え切れないほどの屍が打ち上げられている―――、それらは勿論すべて幻視にすら満たない錯覚なのだと知っているのだけれど。
ひとりきりで、この狭い箱の中にいれば頼るものなど何も無いのだと思い知らされる。ふと、見渡すそらは青い色よりも余程深い色彩、何もかも飲み込む闇色なのだから、自分さえもそう在るべきなのかと直感的に理解してしまいそう、だなんて。
主とは誰だ。我を司る真の光はどこにある。地球から見上げ続けた遠い空には、誰かが伸ばした指先たる争いの火種があるだけだ。希望と共に悲しみを生む、或いはそれ故にこそ彼らはその場所で試されているのだろうか、と。

硬質な音を響かせてコクピットから降り立ったアレルヤは、すぐ傍らに立つ者がいることに気が付いた。手を伸ばせば触れられる距離、けれどそうしようとさえ思わなければただ彼は傍らにいるだけの人物だ。言葉にし難い感情を持て余す、借り物の力を一度手放してしまえば寄る辺ない孤独な一人の人間でしかない。つまり―――どちらにせよ、感慨は孤独というただ一語で纏められてしまうのだということに、急に思い至って。
ああ我が主よ、本当の自分には一歩を踏み出す力さえ。或いはその意味さえはかりかね、何に躊躇いを覚えるのかすら明確には分からないのだ。
誰かが抱えている想いを、自分と同じ悲しみだと思い込む傲慢さを、アレルヤには持つことができない。たとえ、そこにいるのが誰であろうとそれは同じことだ。戦場から帰還した直後の共感すらもそれは状況がそうであるということに過ぎない。その思考だけは迷いではなく、

「お前は愚かだ」

アレルヤの思考を遮るように、ひそやかな賛辞を届けた声は、するりと目の前を通り過ぎて、零れ落ちた響きすらそのてのひらには残らない。その言葉には鮮やかさと言うほどの閃きはなく、何一つ傷つけることなく失せていく。まるで鈍い光彩を操る魔法のように、なんて独り言は相応しくない、のだろうか。

「ティエリア?」
「お前は殺してきたんだろう、お前が死んだのではなく。アレルヤ」

そうか、とアレルヤは一つ瞬いた。脳裏に鮮明なイメージが浮かび、そして崩れていく。いつでも、暗い色の砂浜で、横たわる死体の顔は自分にそっくりだったのに。日の落ちた海辺では今まで見えなかった―――のではなくて、見ようとしなかったのかも知れないけれど。少なくとも、その映像は具現化することなく虚像のまま消え失せてしまったから本当のところはどうなのか分からずじまいだ。
鋭く眼球の上を滑った光に射抜かれて、アレルヤはゆっくりと微笑んだ。
優しさが切り裂く傷跡は、きっと何よりも深くそれは償いすらも受け入れられない、後は緩やかに死んでいくだけなのだ。即ち、差し伸べられる赦しよりも指先はよほど暗い深淵へと導かれていくほうが相応しい。
そうして、快さと鋭い痛みが同時に居する心中を切り裂く、赤の瞳に宿るものはきっと同じ覚悟なのだから。

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プロフィール
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河西
性別:
女性
自己紹介:
アレルヤは搭乗機はフランカー推奨。キュリオスでコブラやらないかなっと。(んなアホな


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